僕が見た一人のトップセールスは、いわゆる「営業らしい営業」をしていなかった。
それなのに、気づけば相手は「やります!」と自分から言っている。
彼の営業スタイルは自然で、力みがない。向こうも最初は、これが商談だとは思っていない。ただの日常の会話のように始まり、何気ないやり取りの中で少しずつ油が注がれていく。そして、気づいたときには炎が燃え上がっている。相手は「やらなきゃ」と焦るのではなく、「やりたい」と思い始めている。
強引に決めさせるのではなく、決断の流れが自然に生まれる。いきなり「決めましょう」とは言わない。まずは小さく探りを入れるように、相手が「YES」と言いやすいテストクロージングを積み重ねていく。そうして、最後にはもう迷う理由がなくなり、自分の意志で決めることになる。
ただヨイショするのではなく、絶妙なバランス感
このトップセールスは、ただ褒めて相手を気持ちよくさせるわけではなかった。もちろん、相手の良い部分を見つけるのは得意だし、それを伝えるのも上手い。でも、必要があれば厳しいことも言う。
「なるほど。でも、本当にそれが問題ですか?」
「そう思うの、めちゃくちゃ分かります。でも、実際には…?」
「もしやるとしたら、どうなりそうです?」
こうした言葉を投げかけながら、相手が「動かない理由」を見直すきっかけを作る。頭ごなしに否定するのではなく、気づかせる。そして、ただヨイショするのではなく、ときには厳しさを混ぜながら、相手にとって本当に必要なことを考えさせる。その絶妙なバランスが、「この人の言うことは信頼できる」と思わせていた。
「営業感ゼロ」で始まり、クロージングへ向かう流れ
最初から「売ろう」としない。相手は商談を受けているとは思わず、ただの雑談だと感じている。
「いやー、最近どうなんですか?」
「それ、面白いですね!」
「ところで、◯◯って考えたことあります?」
気づけば相手が、自分の状況を話している。ここが最初の火種となる。
テストクロージングで相手の気持ちを温める
いきなり「契約しましょう」とは言わない。まずは、小さなYESを積み重ねる。
「これ、ちょっと興味あります?」
「もしやるなら、どんな形が理想です?」
「それ、やったらめっちゃ面白くないです?」
この時点では決断を迫っていない。でも、相手の気持ちは少しずつ動き始めている。「やったらいいかも」という感覚が生まれ、それが次第に大きくなっていく。
「やらなきゃ」ではなく、「やりたくなる」空気を作る
大事なのは、相手のエネルギーを高めることだった。無理に決断させるのではなく、自然と「やりたい」と思わせる。
「これ、やったらめっちゃ面白いことになりません?」
「いや、これ最高じゃないですか?」
「想像してみてください。めちゃくちゃいい未来じゃないですか?」
そう言われると、相手の中でワクワクが膨らんでいく。「どうしよう…」と悩む時間は消え、「やりたい!」という気持ちが前に出てくる。
最後のクロージング:「やります!」が自然に出る
そして最後の一押し。でも、それは「決めてください」と迫るものではなかった。
「じゃあ、どう進めましょうか?」
「やるなら、このタイミングがベストですね」
「もう、イメージは固まってますよね?」
この時点で、相手は「決断しなければ」とは思っていない。ただ、気づけば「やる流れ」になっていて、それを自分で選ぶしかない状況になっている。だからこそ、「やります!」という言葉が自然に出てしまうのだ。
まとめ
僕が見たトップセールスは、ただ話が上手いわけではなかった。相手の気持ちを引き出し、ワクワクさせ、自然と決断の流れを作る。その結果、「やらなきゃ」ではなく「やりたい」と思わせるのが異常にうまかった。
営業らしさを感じさせず、ただの日常の会話のように始まり、少しずつ熱を加えていき、最後には相手が自分から「やります!」と言ってしまう。
それは、押し売りではなく、納得感のある決断を生み出す技術だった。だからこそ、彼は「強引に売っているように見えないのに、なぜか契約を取り続ける人」になっていたのだ。
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